2011年12月5日月曜日

大学の多様性

この前に出させてもらった、「本音で語る! 国際競争力のある人材」で、日本企業は多様性がないという話題に。
パネリストの企業の方で、誰も中途採用の方はいない!
つまり、全員新卒一括採用で、そのまま昇進してきた方たち。
「これじゃあ、多様性が少なすぎる。イノベーションは生まれない!」と米倉先生は言うわけです。
確かにそうなのかもしれないけれど、振り返って、僕たち大学はどうなんだろう。
ちょっと調べてみたので、メモ。

学長の出身校を見てみよう。

まずは、ハーバード。現在の学長から、直近の5人を振り返ってみましょう。5人の学長で、いわゆるピュア・ハーバードの人は、Nathan Puseyだけ。最近の、Catherine Faustなんて、一切、ハーバードと関係なし。しかも女性。だけど、Faust以外の4人は、ハーバードで教えていたり、学位がハーバードだったりしている。そんなに多様性があるわけではないかな。
  • 現在の学長:Catherine Drew Gilpin Faustさん。歴史学者。女性! Ph.Dはペンシルバニア。ハーバード卒じゃないんだな~。しかも、ハーバードで教鞭もとってない!
  • この前:Laurence Henry Summersさん。経済学者。Ph.DはMIT。ハーバードで教えてたんだ。
  • その前:、Neil Leon Rudenstineさん。教育学者。この人は、Ph.Dはハーバード。
  • さらにその前:Derek Bokさん。法学者。ハーバードで教えてる。ハーバードでもJDをとっているけど、最後の学位はGeorge Washington大学。
  • その前:Nathan Pusey。この人は、歴史学者で、学部からPh.Dまでハーバード。完全なハーバード育ち。

じゃあ、MITはどうだろう。直近の2人は、全然MITとは関係ない人。しかも、現在の学長はHarvardと同じように女性。流行りなのかな。
  • 現在の学長:Susan Hockfieldさん。女性! Ph.Dは、Georgetown。医学者なんだ。キャリアはMITとは関係なし。へー。
  • Charles M. Vestさん。学位は、West Virginia。MITの学長になるまでは、University of MichiganのMechanical Engineeringの先生。MITとは関係なしだ。
  • Paul E. Grayさん。この人は、MIT卒。電気工学が専門。
  • Jerome Wiesnerさん。この人もMIT関連。MIT Radiation Labで働いていたり、電気工学の先生として働いていたり。
  • Howard W Johnsonは、Sloan SchoolのDeanだったんだ。学位は、修士でシカゴ大学。その後、MITへ。

もう一校、アメリカの大学を。Stanfordはどうだろう。まず、女性はいない。スタンフォードPh.Dはいない。内部進学者は学長になってない。
  • 現在の学長:John L. Hennessyさん。コンピューター・サイエンティスト。Ph.Dは、SUNY。スタンフォードで教えてた先生。
  • Gerhard Casperさん。法学者。ドイツ生まれ。最終学歴は、University of Freiburg。そこから、バークレーに行って、シカゴ大学に行ってなどなど。学長になるまでStanfordとは関係なさそう。
  • Donald Kennedyさん。Ph.Dはハーバード。スタンフォードのバイオロジーの先生。
  • Richard W. Lymanさん。Ph.Dはハーバード。教育学者。スタンフォードの先生。
  • Kenneth Pitzerさん。物理学者。Ph.Dはバークレー。バークレーとかライスで教えていて、そこからスタンフォードの学長に。

イギリスの大学はどうだろう。まずは、オックスフォード。内部進学者が多い。現在の学長が初めて、オックスフォードとは関係ない人。
  • 現在の学長(Vice Chancellor):Andrew D. Hamiltonさん。Ph.Dはケンブリッジ。超分子化学等が専門。オックスフォードとは関係ない人。オックスフォード900年の歴史で、初めて、学生または教員としてオックスフォード在籍歴のない初めての学長らしい。
  • John Hoodさん。ビジネスマン。オックスフォードで経営学修士。
  • Colin Lucasさん。歴史学者。オックスフォード卒。シェフィールドとかマンチェスターを経て、オックスフォードへ。
  • Peter Northさん。法学者。オックスフォード卒。
  • Richard Southwoodさん。動物学。学位は、Rothamsted Experimental Station。そこからオックスフォードへ。

じゃあ、ケンブリッジはどうだろう。ここもケンブリッジ卒がわりと多い。でも、現在の学長は関係なかったり、その前は女性だったりする。
  • 現在の学長(Vice Chancellor):Leszek Borysiewiczさん。物理学者。免疫学者。Royal Postgraduate Medical SchoolのPh.D。ケンブリッジとは関係ない様子。
  • Alison Richardさん。初のケンブリッジの女性の学長。学部がケンブリッジ。Ph.DはKing's College。文化人類学。
  • Alec Broersさん。電気工学。インド生。ケンブリッジ卒。
  • David Glyndwrさん。法廷弁護士。ケンブリッジ卒。

じゃあ、LSE(London School of Economics)はどうだろう。自分の出身校なのにあまり知らなかった。LSEとは関係ない人が多い。
  • 現在の学長:Craig Calhounさん。アメリカの社会学者。NY大学から。LSEとは関係なし。
  • Judith Reesさん。女性。前任者がリビアからのFundを受け入れていたことで問題になり、次の人へのバトンタッチの間の学長。LSEで教えていたGeographyが専門の学者。
  • Howard Daviesさん。エコノミストだけど、学者と言うよりも行政の人。オックスフォード。
  • Anthony Giddensさん。社会学者。LSEからは修士号。Ph.Dはケンブリッジ。
  • John Ashworthさん。バイオロジーが専門。LSEとは関係ない。Ph.DはLeicester。
こう見ると、アメリカもイギリスも、学長はやっぱりそこの大学で学位を持っている人とか、教えている人が多い。でも、全然関係ないところから学長を呼んでくるのがわりと最近の流行。
日本はまだまだ内部の人がばかりだけど、世界のこの流れがどうなっていくのかは注目。


2011年12月4日日曜日

雲外蒼天がアップされています

IECの雲外蒼天がアップされています。
今月は、グローバル人材について。
グローバル人材と言っているけど、本当に多様性を受け入れる体制ができているのか問題についてです。


2011年11月28日月曜日

諏訪での価値づくりから始める経営戦略

今日は、諏訪の青年会議所に呼んで頂き、『価値づくりから始める経営戦略』です。
たくさんの人に来場してもらえると嬉しいです。


2011年11月23日水曜日

関西学院大学 イノベーション研究センター

関西学院大学 イノベーション研究センターのセミナーで発表してきました。
関西学院大学は初めて行ったのだけど、キャンパスがすごく綺麗。
アメリカの大学が小さくなった感じ。
しかも、なんだか学生たちが楽しそう。
カップルも多いし。













呼んでくれた加藤さん、ありがとうございます。


2011年11月14日月曜日

国際競争力のある人材

今週の水曜日はこんなイベントに出ます。
国際競争力ってなんなんだろうって考えます。
お近くの方、お近くではない方もぜひ!


2011年10月31日月曜日

Business and Economic History On-Line

ちょっと忘れてしまっていたので、最新ニュースではないのですが、Business and Economic History On-Lineに論文が載っています。工藤さんとの共著の論文です。

















  • 半導体レーザーをケースに、どのように知識が伝達していくのかのプロセスを分析しています。
  • MOCVDと呼ばれる技術がいかにアメリカのDepartment of Energyのリサーチから生み出され、それがCD用の技術として結実していくかのプロセスです。
  • 国内市場での競争、暗黙知ではなく形式知の重要性、プロセスイノベーションが国際的な知識の伝播を促進していたという議論です。

2011年10月21日金曜日

第3回オープンイノベーション・コンソーシアム

本日は第3回オープンイノベーション・コンソーシアムです。
六本木のアカデミーヒルズです。
DSMがスポンサーになってくれていて、いつも活発な議論があるので、刺激的です。
本日は2本立て。

  • Open Innovationの罠:日米の半導体レーザー
  • NTTドコモとガラパゴス化

国立のための新提案

11月6日の13時50分から15時30分まで、一橋大学兼松講堂にて、『一橋祭×ビジコン~国立のための新提案~』があります。
お近くの方も、お近くではない方も、是非!



2011年10月19日水曜日

東京医科歯科大学でのMMA

今週は東京医科歯科大学でのMMA(医療管理政策学)で、戦略と組織のレクチャーです。
医療関係のMBA的なところです。
病院経営はまだまだマネジメントのやり用でいろいろイノベーションがあり得るのではないでしょうか。
クラスは、大きくは以下の3本柱。

  • イノベーションとは
  • 経営戦略論について
  • 組織について

2011年10月8日土曜日

雲外蒼天がアップされています

いつもお世話になっているIECの雲外蒼天がアップされています。
今回は、流行りの「経営」をインスタントに取り入れること」についてです。
  • 世の中にはいろいろな流行りの経営がある。
  • これらを単純に取り入れてもなかなかうまくいかない。
  • 文脈に根ざしたものこそが長期的な競争力に。

2011年10月2日日曜日

一橋ビジネスレビュー

ちょっと遅くなってしまいましたが、『一橋ビジネスレビュー』が発売されています。
今回の特集は、金融規制と金融ビジネス。

佐倉市国際文化大学

佐倉市国際文化大学で『イノベーションと今後の課題』ということで話しをしてきました。

  • 受講生の方は、人生の大先輩!
  • 質問たたくさん出て、授業している方も楽しかったです。
  • イノベーションについての興味と日本の経済の今後については大きな関心。

2011年9月29日木曜日

冬学期の授業

いよいよ来週の火曜日から、冬学期の授業が始まります。
リーディングはThe Structure of Scientific RevolutionsInside the Black Box
どちらも、イノベーションの必須のリーディングです。


2011年9月5日月曜日

雲外蒼天がアップされています

いつもお世話になっているIECの雲外蒼天がアップされています。
今回は、ビジネスプラン・コンテストについて。

  • 中高生のビジネス・プランコンテストに審査員として出席
  • インキュベーターが出資をしていて驚き
  • プレゼン能力の高さにも驚き
  • 価値づくりを考えるヒントも

2011年9月4日日曜日

新化学技術推進協会(JACI)の戦略提言部会

これからの化学産業とその国際競争力を考える戦略提言部会の合宿に参加してきました。
  • この部会は、日本の大手化学会社の方々が多く集まり、議論がフランクに行われていて、面白い。
  • 勉強になることも多い。ただ、イノベーションというとどうしても「技術革新」と捉えられている側面が多い。
以下は単なるメモ
  • メタンハイドレート
  • 核融合(常温)
  • 太陽熱
  • 新しい太陽光
  • レアメタルは、大根の葉


次回も楽しみです。

2011年8月29日月曜日

IIR Innovation Summer School 2011

今年のIIR Summer School 2011。
皆様のおかげで、無事に終わりました。
50名をこえるイノベーションを研究している研究者が集まってくれました。
来年も開催の予定ですので、ぜひ!

2011年8月22日月曜日

High School Start Up Summit

8月27日に、第1回のHigh School Start Up Summitというイベントに、ビジネスプラン・コンテストの審査員として出てきます。
中高生がどんなビジネス・プランを考えてくれるのか、楽しみです。
「世界を動かす」ようなエキサイティングなものがでてくると期待しています。
Ustreamでもやるようなのでぜひ!

2011年8月13日土曜日

ガブリエルとオレイシア

Northwestern Universityに留学してた時のルームメイトのガブリエル。
その時に知り合ったオレイシアと結婚し、子どもが。
ディミトリ君。通称はミーチャ。
ガブリエルはPh.Dをとった後、Operation Research系の会社に。
オレイシアは現在、Boston UniversityでGraduate Student。労働経済学。
ひさしぶりに留学してた時の友だちに会うのも嬉しい。

2011年8月2日火曜日

2011オープン・イノベーションマッチング

大田区のオープン・イノベーション・マッチングにコーディネーターとして行ってきます。
高い技術力を持った中小企業といわゆる大企業の間のマッチング。
それぞれからどのような要望がでるか楽しみです。
日時:8月5日
場所:大田産業プラザ


雲外蒼天がアップされています

『20歳のときに知っておきたかったこと』でのスタンフォードでの授業と一橋のとの違いです。
なぜ、スタンフォードと一橋で10倍もの差がついたのでしょう。

2011年7月22日金曜日

新化学技術推進協会(JACI)の戦略提言

今日は、新化学技術推進協会(JACI)の戦略提言部会。
今後の日本の化学産業の戦略を提言するために、企業や国の研究機関、大学などから人が集まり、議論します。
化学産業は、波及効果の大きい基盤産業です。ここの競争力をいかに高めるのか、環境との調和をどのようにとっていくのか等についての戦略を考えます。



2011年7月11日月曜日

雲外蒼天がアップされています

いつもお世話になっているIECの雲外蒼天がアップされています。
今月は、「1位じゃなければダメな理由は、ABBAにあり」です。
科学技術で1位でなければならない根性論以外の理由についてです。

2011年7月6日水曜日

研究室の本棚入れ替え

本棚を入れ替えるため、研究室が大変なことに。
少しでも揺れたら、全部崩れてくることに。


2011年6月25日土曜日

Prometheusに論文が掲載されました

イノベーションの学術誌のPrometheusに論文が掲載されました。
タイトルは、Role of Doctoral Scientists in Corporate R&D in Laser Diode Research in Japan
大学院生の原君との共著です。
論文の背景
  •  日本には、2つの種類の博士号があります。大学院の博士課程を出て取得できる課程博士と論文を提出することで取得できる論文博士です。
  • 現在、国際スタンダードに合わせるために、課程博士へと一本化しようという流れがあります。
  • この論文は、日本の研究開発における博士号をもった研究者のパフォーマンスに関するもので、それぞれの博士には少し違った役割があるのではということからスタートしています。
結論
  • これら2つの博士の企業におけるパフォーマンスを分析しています。
  • 結論は、論文博士は外部のイノベーションを取り入れるのに重要な役割を担っている可能性を示唆しています。
  • 単純に国際スタンダードに合わせるために課程博士へと博士号を一本化してしまうと、日本企業にとっては重要な外部の知識を吸収するチャネルを1つなくしてしまう可能性があるという論文です。

2011年6月22日水曜日

まちかどゼミナール

一橋大学の学生たちが主催している「まちかどゼミナール」で授業をしてきました。
①イノベーションの基本的な特徴と②歴史の流れから見るイノベーションという2つの観点でした。
いろいろな意見も出て、ディスカッションも多く僕にとっても学びが多いゼミに。
インタラクティブなのはやっぱり良い!

一橋ビジネスレビュー

一橋ビジネスレビューが発売されています。
今回の特集は『知識経営の最前線』。
野中郁次郎大いに語るです。



僕は「特集にあたって」を担当しています。
『知識創造企業』から15年が経って、どのくらいナレッジ・マネジメントが変わってきているのかが分かります。
知識経営の最前線をぜひ!

2011年6月9日木曜日

雲外蒼天がアップされています

いつもお世話になっているIECの雲外蒼天のページがアップされています。
今回は、イノベーションが群生することについて。

2011年6月3日金曜日

広島へ

広島県立文書館へ行ってきました。
リサーチの資料を求めて。
初めてのいわゆる古文書。
読めるかかなり不安。つらそうだなー。


初めての広島。
ついでに、原爆ドームへ。


2011年5月26日木曜日

イノベーション・サマースクール2011

去年に引き続き、今年もイノベーション・サマースクールを開催します。
  • 日時:8月24-25日
  • 場所:佐野書院(一橋大学)
  • 7月10日が参加申し込みの締切です。

2011年5月7日土曜日

雲外蒼天がアップされています

いつもお世話になっているIECのサイトの雲外蒼天がアップされています。
今回は、「最近の若者」についてです。

2011年5月3日火曜日

授業開始

大学も授業が始まりました。今年は学部は、1年生と2年生のゼミ。
  •  レゴを使って、クリエイティビティとか分業などについて考えています。
  • 結構楽しいんのです。これが。
  • 1・2年生はまだまだフレッシュで良いです。(3・4年生も、大学院生もそれはまた良いのですが。)

2011年4月21日木曜日

制度転換期の企業と市場


1章を書いた本が出版されました。本は、『制度転換期の企業と市場』。
  • 担当したのは、米倉誠一郎・清水洋「日本の業界団体:産業政策と企業の能力構築の共進化」『制度転換期の企業と市場』ミネルヴァ書房195-220頁, 2011年
  • なんだか僕らの章は、1937-1955という枠にイマイチはいっていない気もします。
  • シリーズモノです。

2011年4月6日水曜日

Business History Conferenceでの発表

Business History Conferenceで研究発表してきました。
  •  発表は、Knowledge Transferについて。
  • ソニーのCDプレーヤーのMOCVDの話し。
  •  Codified Knowldgeの重要性について。
  • 良いフィードバックをもらう。
学会が行われたセントルイスの前には、ボストンでインタビュー調査とTom Nicholasとの研究の打ち合わせ。たまたまHBSのカフェで竹内先生に会う。素晴らしいコミュニティ。

雲外蒼天がアップされています


いつもお世話になっているIECのサイトの雲外蒼天がアップされています。
今回は、地震からの復興についてです。

2011年3月23日水曜日

一橋ビジネスレビュー

一橋ビジネスレビューが出版されています。今回の特集は『歴史に学ぶリーダーシップ』です。今回は責任編集と論文の執筆を担当しています。「特集にあたって」はぜひ。論文は、「科学技術におけるコミュニティ構築のリーダーシップ:林厳雄と半導体レーザー」です。
  • サイエンス型産業における研究者のコミュニティの重要性
  • 林厳雄さんの静かなリーダーシップ
  • リーダーシップ・ワナビーを超えて



2011年3月19日土曜日

Australian Economic History Review

Australian Economic History Reviewに論文が掲載されました。
タイトルはScientific Breakthroughs and Networks in the Case of Semiconductor Laser Technology in the US and Japan, 1960s-2000s
  • 日米の科学におけるブレークスルーとネットワークのあり方の関係の比較研究。
  • なぜアメリカから1980年代以降ブレークスルーが減っているのか、なぜ日本から増えているのか。
  • ネットワークが拡大するにしたがって、ブレークスルーは減っていくアメリカ。
  • 重要な点は、どこにR&D Effortsが行くか。




イノベーション研究センターから卒業生へ向けて

イノベーション研究センターから卒業生へのメッセージです。
以下はイノベーション研究センターのホームページから。

一橋大学イノベーション研究センターより

一橋大学・大学院を卒業する諸君へ


未曾有の災害に見舞われ、卒業式 が中止となっても、君たちの希望には何一つ輝きを失うものはない。日本はついに新たな出発点に立ったのだ。そして、その日本は君たちのイノベーティブでク リエーティブな発想を求めている。ただし、諸君のタスクは単純なる「復興」ではない。昔に戻るのではなく、現状を創造的に破壊して新たな日本を創りだすこ となのだ。在学中にイノベーションについて学んだ諸君に、わがイノベーション研究センターは熱いエールを送りたい。

瓦礫の山と化した東北の町並みを見る時、諸君には戦後焦土と化した東京の写真を思い浮かべて欲しい。あの敗戦の中にあって、日本の力強い復興を構想してい た男たちがいたのである。とくに、日本が誇るべき技術者経営者西山弥太郎(川崎製鉄初代社長)の発言を餞(はなむけ)として捧げたい。

西山は、一九五〇(昭和二五)年朝鮮動乱でやっと息を吹き返したばかりの日本で、千葉に最新鋭銑鋼一貫製鉄所建設を宣言する。日本にはまだ数多くの旧型高 炉が残存し、悲観論が漂っていた最中である。当時日銀総裁であり法王と怖れられた一万田尚人には、残念ながら西山の言う意味が分からなかった。一万田はこ の構想に「川鉄千葉にはペンペン草を生やしてみせる」と大反対したのである。しかし、西山には、「超重要課題は唯一つ設備の近代化だ。好調に酔い、自立 化、合理化を怠るものありとするならば、いずれ来る厳しい国際競争に敗れ落伍せねばならない」という厳しい危機意識があった。そして、「よしんば政府資金 がでずとも、私は万難を排して成功に導く自信と勇気を持っている。神経に病んでくよくよしていたら一歩も進めない。三日先の見通しは神ならぬ身の知るよし がない。機に臨めば亦新たな考えも出てくるというものだ」という強い意志があった。

いまの日本には技術も人材も何とか金もある。ただ欠落しているのは、日本人の決断力と「機に臨めば亦新たな考えも出てくる」という楽観的進取の精神なのである。

世界に冠たる「低炭素化社会」と「豊かさと人間性が両立する社会」に向けたイノベーション投資に躊躇してはならない。諸君は新しい日本を担う「キャプテン・オブ・イノベーション」なのである。




センター長 米倉誠一郎

2011年3月8日火曜日

雲外蒼天がアップされています


いつもお世話になっているIECのサイトの雲外蒼天がアップされています。
今回は、1月に行ったバングラデシュの話の続きです。

2011年2月15日火曜日

JBPressのイノベーションを斬る

JBPressのイノベーションを斬るに『日本の研究開発が米国よりも途切れやすい理由:必要なのは研究者受け入れの仕組み」がアップされています。
  • 日本はアメリカと比べると、社会的に見れば研究開発の継続性が途切れやすい
  • その理由は、流動性の低さにある

2011年2月1日火曜日

雲外蒼天がアップされています


いつもお世話になっているIECのサイトの雲外蒼天がアップされています。
今回は、1月に行ったバングラデシュの話です。

2011年1月30日日曜日

ティナ・シーリグさんへのインタビュー

『20歳の時に知っておきたかったこと』の著者のティナ・シーリグさんへの年末のインタビューの記事がアップされています。

  • ゲームのルールを考えること
  • Not Giving Up
  • Noと言われるものを
いかにも、アメリカのビジネススクールの先生(実際は、工学部なのですが)という感じでした。ヨーロッパの先生とは違う(良い意味でも、悪い意味でも)。インタビューは、とても楽しく、僕が一橋の学部の授業でやった実験の結果は、彼女の次の本で紹介されるそうです。楽しみ。


2011年1月28日金曜日

企業研究所ワークショップ「企業研究における実証アプローチ」

中央大学の企業研究所ワークショップ「企業研究における実証アプローチ」 で発表してきました。
  • タイトルは、Pitfalls of open innovation: the technological trajectory in laser diodes in the United States and Japan。
  • 良いフィードバックももらえました。ありがとうございます。
  • それにしても多摩キャンパスは、モノレールが出来てからものすごく便利になった。



2011年1月17日月曜日

Book Reviewが掲載されました

Social Science Japan JournalにBook Reviewが掲載されました。
  • オンラインのアドバンス版です。紙媒体の出版は7月の予定。
  •  書評したのは、『イノヴェーションの創出』。
  • 書評を書くのは、本を真面目に読まないといけないので好きです。

2011年1月13日木曜日

The Invention of Enterprise: Entrepreneurship from Ancient Mesopotamia to Modern Times


The Invention of Enterprise: Entrepreneurship from Ancient Mesopotamia to Modern TimesがPrinceton University Pressから出版されています。
  • 17章の Entrepreneurship in Pre-World War II Japan: The Role and Logic of the Zaibatsuを米倉誠一郎先生と担当しています。
  •  第17章は、日本の財閥という組織がいかに重要なイノベーションであったのかを、その誕生と共に歴史的に分析しています。
  •  David S. LandesやJoel Mokyr、William J. Baumolといったそうそうたるメンバーと一緒にできたのは単純に嬉しかったですよ。特にMokyrはNorthwesternの時の先生だったから感慨も。
  • Joel Mokyrは尊敬する学者の一人です。

2011年1月12日水曜日

はじめての経営学





経営学の初学者向けの『一橋ビジネスレビュー』の別冊が出版されています。
経営戦略や、ファイナンス、リーダーシップなど経営学の重要なエリアをカバーしています。
僕は経営史を担当しています。

バングラデシュへ

バングラデシュへ行ってきました。
ダッカと、ダッカから船で4時間ぐらいのエクラスプールという村です。

歯磨きを教えてきましたよ。
一緒に行った学生たちが自分たちでできることから動き出そうとしているのが素晴らしい。
実際に体を動かしてから、大学へ戻るとインプットも効果的に。

2011年1月11日火曜日

Business Historyに論文が載りました

Business Historyに論文が載りました。
タイトルは、"Different Evolutionary Paths: Technological Development of Laser Diodes in the US and Japan, 1960-2000"です。
    • 日米の技術発展の違いを半導体レーザーをケースに歴史的に分析しています。
    • 労働市場の流動性、研究のネットワーク、企業の垂直統合の程度が日米の技術発展の経路に影響を与えたというのが主旨です。
    • 高い流動性や大きな研究のネットワーク、ベンチャーキャピタルによるリスクマネーが、常に大きな技術発展を導くわけではないというインプリケーションです。